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8.窓開け録音の方法

最終更新: 2018年10月22日



窓を開けると、たとえば国鉄型気動車の「カラカラ・・・」というエンジン音が極めて明瞭に録れるので、臨場感が増します。車内の会話なども聞こえなくなるのが利点です。


けれど、窓を開放することは、他の乗客との兼ね合いがあるので、まずは録音テクニック以前に、窓開け録音の心構えを考えてみたいと思います。


窓開けしてはいけない場合。

風が入り込んで他の乗客に当たったり、冷房中に窓を開けて冷気が逃がしてしまってはいけません。当然ですが、こうした実害は避けなければなりません。他人に実害を及ぼす恐れのあるときは実行してはいけません。


たとえ実害が生じるおそれがほとんどないとしても、窓を開けているのを他の乗客が見て、「あ、こいつ、窓を開けてやがる。迷惑だなあ。」と思わせないことも大切なのではないかと思います。功利主義的に他人に不利益が生じるかどうかだけで判断するのではなく、窓を開けたら他人がどう思うかということを考慮するようにしています。


ラストランなど、貴重な時期に起こりやすいことですが、寒い中でも、窓を開けて録音してしまいたい誘惑に駆られる場合はもちろんあります。


こういう場合こそ、きちんと様々な要素を考慮して、冷静に判断しましょう。窓を開けてもいいという合理的な判断が下せない状況なのに、空いているとか、風下だとか、カーテンを閉めて風の入り込みを防いでいるとか、自分に有利な状況だけをピックアップして実行することは絶対に避けましょう。目立つ時期にこういうことが横行すると、音鉄の評判を一気に下げてしまいます。



窓開けしていい場合。


では、具体的に、どういうふうに窓開け録音するのがいいか考えてみます。


乗客がほとんどいない。

乗客がほとんどいない、ということは何よりも気が楽です。


非冷房車の走る線区である。

北海道のローカル線など、非冷房車ばかりの路線は、一般的に窓開けへの抵抗がないので、乗客が多めでも窓は開けやすくなります。地域性も考慮するといいと思います。


一般人が暑いと感じる程度の気温である。

気温が高いとか自分が暑いと思うかだけではなく、他の乗客も窓を開けているなどの事情があると、窓開けしやすくなります。


冷暖房が作動していない。

たとえ冷房風よりも外気のほうが涼しくて、どう考えても窓開けしたほうが涼しくなる場合でも、他の乗客の印象を考えると、冷房作動中は窓開けNGだと考えるのが一般的かなと思います。じつは、当方も冷房車で少しだけ開けたことを告白しておきます。越後線の115系のときですが、このとき周りにだれもいなかったので、まあいいか…と思ってしまいました。でも、やっぱり気が引けて閉めてしまいました。暖房中は言わずもがなです。


他の乗客に風が当たらない場所である。

風上の座席に陣取るのではなく、風下の車端部で録音すると、風がほとんど入り込まなくなり、余計な心配をせずに済みます。


天候が良好である。

雨の強さというより、雨に風が混じると雨粒が吹き込んできてしまいます。携帯サイトから雨雲レーダーなどを調べ、天気の移り変わりを前もって調べておくといいです。



迷惑をまったくかけないということはない。


窓開け録音は、考慮すべき要素がたくさんあるだけで、開けるということ自体は、べつに禁止されていることではありません。思いやりの意識を持ち、現場の事情に合わせ、事情をひとつひとつ検証したら、あとは自信を持って決断すればいいと思います。


公共交通の利用は社会生活ですから、迷惑をまったくかけない人間などいません。判断は間違っていなかったはずだけれど、予期せず迷惑がかかってしまった、そんなこともあります。もし、窓開けに過敏な人がいて、迷惑そうにしている人がいたら、ひとこと謝罪して窓を閉めれば解決します。マナー違反を防ぐだけでなく、マナー違反を回復する手段を講じることも大切なことだと思います。



窓開け録音を失敗しないためのポイント。


いざ窓開け録音を開始したとしても、慣れないと失敗することが多いです。練習することも大切だと思います。当方の経験から、次のようなポイントを意識して録音してみて下さい 。


窓開けはほんの少し。

風の入り込みや大音量を避けるため、窓開けはほんの少しがポイントです。


遮光カーテンを下げる。

窓を開けた状態で遮光カーテンを下げると、かなり風の入り込みが防げます。外観的にもおすすめです。


マイクを外側・下向き・風上側に。

単に窓を開けても、マイクを外側に向けないと、ほとんど効果はありません。かえって騒音が記録されるだけです。


マイクを窓に近づけるというより、マイクの向きを外側に向けることが大切です。できればマイクはモーター音やエンジン音をはっきり録るために、下に向けます。また、マイクを窓の風上側に設置することも重要です。風防があればぜひ使用したいところですが、なくてもマイクの位置で風切り音をかなり防げます。


録音レベルをかなり絞って。

窓を開けて録音すると、とにかく音量差が激しいです。とくにトンネルなど、構造物に接近した場合の音量は凄まじいものがあります。いつもより録音レベルを下げておくといいと思います。設定値はマイクと窓との近接度によってかなり異なりますが、いつもの録音レベルの7.5~7割程度に絞るといいと思います。


音量差が生じた時はコンプレッサーやリミッター、ボリュームで編集することになると思います。下の参考例ではトンネルや鉄橋通過時の音量を編集で半分以上下げたうえに、iZotope RXでクリッピングを修復しました。


バイノーラル録音する。

普通のマイクより、バイノーラルマイクのほうが、窓開け録音の場合は特にリアルかつ美しくに録れると思います。ロングシートの場合、バイノーラルマイクを耳に装着して録音すれば、座っているだけで非常に手軽に録音できます。クロスシートの場合は、車窓を眺めながら録音できます。


戸袋近くでも窓開けと同じような効果が得られる。

ドアの隙間からの走行音も、窓開けと似たような効果を得られます。マイクは風下側の戸袋と扉のすき間に設置し、向かい風を受けないようにします。ただ、扉のバタつきが欠点で、走行中は体で押さえたりしなければなりません。



残響音が大げさに記録されすぎて苦手な場合は。


窓の開口部にマイクを向けて録音すると、車外の残響がかなりダイナミックに録音されます。音響がめまぐるしく変化するのが大げさすぎて苦手な人は、マイクを窓からはなすか、閉まっている部分にマイクを向けて(1段目まで窓を開けている場合は、2段目より上にマイクをセッティングする)録音するといいと思います。


こちらの走行音は、窓を全開にし、マイクも外側に向けてバイノーラル録音したものです。外から入ってくるエンジン音や残響音が明瞭に入ります。



こちらは、窓を1段目まで開けて、マイクをそれより上にセッティングし、ガラス部分に向けてバイノーラル録音したものです。残響音が抑制され、車内音もバランスよく録音されています。



収録後の編集のポイント。


風切音の除去

風切音がのってしまった場合は、ノイズ・リダクションソフト「i-Zotope」を使用して、コピー&ペーストで修復します。


音圧の平準化

音量差がありすぎる場合は、面倒がらず、この編集は施したほうがいいと思います。フリーソフト「GauDio」を使用すると、手軽に音圧を平準化できます。


「GauDio」を使わず、フリーソフト「SoundEngine」で編集する場合は次のような編集を施します。


  • 突発的な大音量は、カットしたり、リミッターで小さくした後にノーマライズする。

  • 継続的な大音量は、ボリュームで小さくし、クロスフェードした後にノーマライズする。もしくは、継続的な大音量の一部の周波数をイコライザで小さくし、ノーマライズする。

これらの編集方法は別の記事にて詳述します。